社会保険の基礎知識
社会保険とは、健康保険、厚生年金保険、介護保険のことを指します。
(広義では、雇用保険、労災保険も社会保険に属します。)
法人を設立した場合には、必ず社会保険の加入手続きをしなければなりませんが、個人事業の形態であっても、5人以上の従業員を雇用した場合には加入手続きが必要になります。
強制適用事業 (加入が義務づけられている事業所) |
任意包括適用事業所 (従業員の半数以上が希望すれば加入できる事業所) |
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・従業員を常時5人以上雇っている事業所 |
・従業員が常時5人未満の事業所 |
一般的には、5人も雇用するような事業規模になれば、ほとんどは節税のためにも会社組織に変更しますから、実際には、個人事業での加入の可能性は少ないと考えてもらってもかまいません。
なお、社会保険の被保険者になれるパート、アルバイトは、正社員の勤務日数・勤務時間の4分の3以上勤務している人ですが、2ヵ月以内の契約、4ヵ月以内の季節労働業務、6ヵ月以内の臨時的事業に携わる人、その他日雇いの人は対象外となります。
※健康保険、厚生年金保険に加入しない場合は、国民健康保険と国民年金保険にそれぞれ個人が加入することになります。
健康保険と国民健康保険について
健康保険には大きくわけて、会社に勤めている方が加入する健康保険(一般的に社会保険と言われているもの)と、自営業の方などが加入する国民健康保険の2つがあります。
日本では、病気やけがをしたときに安心してお医者さんにかかれるように、すべての人がいずれかの医療保険(健康保険、国民健康保険等)に加入することになっています。
(国民皆保険制度)
国民健康保険の対象者
国民健康保険の加入対象者は、次のようになります。
・退職して職場の健康保険などをやめた人
・お店などを経営している自営業の人
・パート・アルバイトなどをしていて、職場の健康保険などに加入していない人
・外国人登録をして、日本に1年以上滞在すると認められた外国人
国民健康保険の加入手続き
国民健康保険の手続きは、お住まいの市町村役場・役所にて行います。
診療費の自己負担は3割で、保険料は前年の所得により算出されますので、詳細については役所等で相談されるとよいでしょう。
届出は、次のような日から14日以内に行います。
加入の届出が遅れると、保険料(税)を加入時までさかのぼって納めることとなったり、医療費が全額自己負担になることもありますので、届出は必ず14日以内に行ってください。
こんなとき | 届出に必要なもの | |
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職場の健康保険をやめたとき | 職場の健康保険をやめたときの証明書 →健康保険資格喪失証明書(退職証明書または離職票でも可) |
印鑑 |
他の市町村から転入してきたとき | 他の市町村の転出証明書 | |
職場の健康保険の被扶養者からはずれたとき | 被扶養者でない理由の証明書 | |
子どもが生まれたとき | 母子健康手帳 | 保険証、印鑑 |
生活保護をやめたとき | 保護廃止決定通知書 | 印鑑 |
外国籍の人が加入するとき | 外国人登録証明書 |
※同じ世帯ですでに国民健康保険に加入している方がいる場合世帯全員分の国民健康保険証が必要です。
※退職による年金を受給している方で、老人保健に該当していない場合、厚生年金・共済年金の年金証書が必要です。
(退職者医療制度)
退職者医療制度とは
長い間会社や役所に勤め、退職して国保に加入した人は、老人保健法の適用を受けるまでの間「退職者医療制度」による医療を受けることになります。
<対象者の条件>
国民健康保険の加入者で、厚生年金や船員保険、共済組合などから老齢(退職)年金を受けている人で年金保険の被保険者等の期間が20年以上であるか、40歳以後に10年以上加入して通算老齢(退職)年金の支給を受けている人及びその被扶養者は退職被保険者となります。
<届出の時期>
年金証書を受け取って14日以内に、世帯主は担当窓口へ所定の届書に年金証書を添えて届け出てください。
任意継続とは
在職中に加入していた健康保険を「任意継続する」という方法です。
つまり、会社には在籍していなくても、その会社の保険には加入したままの状態を継続できるという制度です。
診療費は3割の自己負担となります。
在職中の会社負担分がプラスされますので、納める保険料は、在職時の2倍となります。
また、有効期間は退職から2年間と定められています。
これを利用するためには、資格喪失日の前日までに2ヶ月以上健康保険の被保険者であったことが条件となります。
続きは、「健康保険任意継続被保険者資格取得申請書」を資格喪失日から20日以内に管轄の社会保険事務所に提出する必要があります。
この期間を過ぎると、この任意継続制度は、資格そのものがなくなってしまいますので注意してください。
国民健康保険と任意継続の選択基準
国民健康保険の保険料は「加入者・加入予定者の前年度所得および資産」などをもとに算出されるのに対し、任意継続の保険料は離職時の約2倍となります。
恐らくほとんどの人は、離職した年に払うことになる国民健康保険の保険料が割高になるのではないでしょうか。
実際、しばらくは任意継続で様子をみるという人が多いようです。
しかし、失業が長引いて前年の所得は明らかに少ないという人もいるでしょう。
であれば、国民健康保険の保険料が安くなる場合がありますから、改めて国民健康保険に加入する手続きをとります。
扶養家族について
配偶者や親の加入している社会保険(健康保険・厚生年金)の扶養となれば、保険料を支払わなくても扶養者と同じ自己負担額で治療が可能です。
しかし加入するためには、「加入から12ヶ月間の収入見込額が130万円以下でなければならない」という条件があります。 この収入には失業給付も含まれます。
つまり、失業給付の日額が3612円(3612×30×12=130万円)を超えると判断された場合、受給自体ができなくなるというデメリットがあります。